■WSJ-基金構想につながったリスク、エンロン後の規則でも影に隠れる
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)シティグループ(NYSE:C)、JPモルガン・チェース(NYSE:JPM)、バンク・オブ・アメリカ(NYSE:BAC)が計画する最大1000億ドル規模の基金は、信用市場を再活性化し、大手銀行のバランスシートに大きな負担がかかるのを阻止することが目的だが、2つの大きな疑問を呼んでいる。投資家はなぜ来るべき問題に気付かなかったのか。そもそもなぜこのような問題が発生したかだ。
エンロン破たん後に制定された規制改正は、企業がリスクを簿外の特別目的会社に隠すことを阻止するのが目的だった。エンロンの教訓のひとつは、企業が何らリスクをとらずに利益を上げられるとの考え方は、文字通りばかげているということだった。
規制当局はそうした抜け穴を閉じるのに大々的に動いた。しかし現在の状況が示すように、完全には閉じることをしなかっただけではなく、新しい規則は、実際に何が起きているのかを投資家が把握するのをいろいろな意味でむしろ難しくした。
これは銀行、特にシティグループ、バンカメ、JPモルガンなど大手行の株式に投資している投資家には頭痛の種となっている。これら3行は米財務省の支援により、ストラクチャード・インベストメント・ビークル(SIV)など銀行傘下の特別目的会社を救済する策をまとめるために手を組んでいる。
これらSIVや、”コンデュイット”と呼ばれる特別目的会社は、銀行のバランスシートには載らない。規制当局と会計基準団体が、簿外活動を抑制するためにまとめたポスト・エンロンの規制改正では、銀行に抜け道を与えたためだ。
銀行は、SIVやコンデュイットに関連する損失リスクを、表向きに第三者に移転しさえすればよかった。そうすることでこれらをバランスシートから外すことができた。これにより、銀行はバランスシート上の資本を縛られることなく、利益を拡大することができた。
しかしSIV救済計画は、実際には銀行さらに株主がこれら特別目的会社に関連するリスクの多くを背負っていることを示した。
ロサンゼルスの調査・リスク管理システム会社、インスティテューショナル・リスク・アナリティックスのマネジングディレクター、クリストファー・ホァーレン氏は、このことは「(会計規則による)分離といった仮定」と矛盾する、と指摘した。
ホァーレン氏は「これはエンロン病だ。退治されていなかった」と付け加えた。
エンロンは、投資家の目に入らないように取引を簿外に移すのに、そうした取引が会計規則に沿うようにまとめていた。当然ながら、大手銀行がエンロンのような詐欺を働いていると誰かが主張しているわけではない。
現在の規則を起草した財務会計基準審議会(FASB)の広報担当者はコメントを避けた。
銀行は、コマーシャルペーパー(CP)やミディアムタームノート(MTN)を発行するのにSIVやコンデュイットを使い、調達した資金をクレジットカード債権や抵当証券などの資産に投資している。これら特別目的会社は、発行するCP、MTNと投資のスプレッドから利益を得ている。銀行はこれら特別目的会社から手数料を徴収する形でそうした利益を獲得している。
これらSIVやコンデュイットに関する情報開示の欠如が、「実際の影響がどのくらいになるかを把握するのを難しくしている」とムーディーズのシニア会計アナリスト、クレイグ・エムリック氏は指摘する。
エクスポージャーが実際には大きくなかったとしても、銀行がこれまでにSIVやコンデュイットから得てきた利益は、将来的には減少する見込み。シティグループのようにこうした資産を多く抱えている銀行は、利益を圧迫する要因となる。
シティグループは1600億ドル近いSIVとコンデュイットを抱えているが、株主は同社のバランスシートを見ても、それをはっきりと把握することはできない。脚注は、6月30日現在で770億ドルの資産・負債を抱えるコンデュイットに対し、シティグループが”流動性ファシリティー”を提供している、とだけ開示している。
シティグループは、4−6月期の四半期報告書では「ほとんどの場合、当社はコンデュイットの所有権は有していない」としている。SIVには何も触れていない。シティグループは8月に投資家にあてた書簡で、約1000億ドル相当のSIV資産があると開示したが、その後、これは約800億ドルに減少している。
シティグループの広報担当者はコメントを避けた。
銀行は通常、傘下のコンデュイットがIOUをロールオーバーできない場合、その資産を買い取ることに同意している。しかし銀行は、SIVの資産についてはその一部しか支えていない。
コンデュイットやSIVを含む簿外の特別目的会社の大半は、伝統的な意味での”所有者”がいない。実際には、オフショアのタックスヘイブンに設立されたゾンビ企業のような存在。
最近の債券市場の混乱と、それがこれら特別目的会社に与えた影響について、会計基準団体は懸念しているものの、現時点では規則を見直す計画はないという。